カサビアン『ルナティック・アサイラム』
カサビアン『ルナティック・アサイラム』 Kasabian - West Ryder Pauper Lunatic Asylum
SNOOZER #074 - 2009年8月号 170ページ 文:田中宗一郎
ここ数年、この雑誌の編集長としてストレスを感じてきたことがひとつある。それは、自分の雑誌の中に所謂ハードで、ヘヴィで、ロックなサウンドを持ったスタジアム級のビッグな音楽がほとんど載らなくなってしまったこと。ある意味、ロック色を強めた90年代後半のアンダーワールドが最後だったかもしれない。
もはやレディオヘッドはそういうバンドではないし、オアシスやコールドプレイでは巨大歌声喫茶になってしまう。マーズ・ヴォルタやクラークのようなエクストリームな音楽はあるものの、やはりスケール感が足りない。百歩譲ってミューズがそうかもしれないが、正直、品がなさ過ぎる。だからこそ、プロディジー新作には期待があった。でもクラブを意識しちゃったからね。やはり今、本誌に載っている優れたアクトの大半は、グリズリー・ベアのようにどこか室内楽的なのだ。そして自らの音楽をビッグな場所に合わせようとすると、キラーズのように以前の魅力を失いかけることになってしまう。MGMTのライヴを観た時も、その難しさを痛感した。おそらくアークティック新作は、その踏み絵に挑戦するはずだが、どうなるだろう。
で、唯一の成功例、それがこのアルバムだ。地鳴りのような怒号を上げる6万人の観客を上下に激しくロックするスタジアム級ビッグ・ミュージック。最高。
-----
Fire
Where Did All the Love Go?
Underdog
Vlad the Impaler
-----
http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20090818128.html
-----
※適度に改gy
以上です。
ザ・ボゥディーズ『JUST BE COOL』
ザ・ボゥディーズ『JUST BE COOL』 THE BAWDIES - JUST BE COOL
SNOOZER #081 - 2010年10月号 133ページ 文:田中宗一郎
アルバムの興奮も冷めやらぬまま、ボウディーズが新たなシングルを上梓。しかも素晴らしい。現在のバンドの勢いと成熟を見事にパッケージすることに成功した、新たなアンセムの誕生だ。
もうイントロからして完璧。洒落た和音のギター・カッティング→ベース→ドラム・フィル→ギターの単音リフと、4つの楽器が新たに重なってくる度に身震いがするほど。曲調的には変わらぬ60年代R&B/ソウル・マナーだが、bpm120台半ばにテンポをグッと抑えつつ、ビートルズの ❝エヴリバディ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー❞ を彷彿させる、2倍に刻み、裏拍を強調しまくった超強力なベースラインが、跳ねまくるグルーヴをぐいぐい牽引していく。しかも、3分11秒の間、新たなブレイクに次ぐブレイク、新たな展開に次ぐ展開で、一瞬たりとも弛緩させない。どす黒いROYのヴォーカルとファルセット・コーラスの対比もいい。2ndヴァースから入ってくる、まるでビリー・プレストンが弾いてるようなエレピもいい。曲中盤のブリッジではストーンズの ❝悪魔を憐れむ歌❞ 風の展開で曲のムードをガラッと変え、最後のコーラスのさらなる爆発を準備する。もう最高。あとはホント歌詞だけ。
1年以内に時代を代表するアンセムを書いて下さい。てか、書ける。
-----
JUST BE COOL
-----
http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20100817245.html
-----
※改行はこちらで入れてます
以上。
Franz Ferdinand『Do You Want To』
Franz Ferdinand『Do You Want To』 フランツ・ファーディナンド/フランツ・フェルディナンド
SNOOZER #053 - 2005年10月号 146ページ 文:田中宗一郎
本年度インパクト大賞ナンバー1・トラックの座は、間違いなく、この曲のもの。前半と中盤と後半とアウトロはすべて異なるタイム・シグネチャーで構成されているという、代表曲 ❝テイク・ミー・アウト❞ をも凌ぐ、かなり実験的な作り。だが、一度聴いたら絶対に忘れないだろう、とことんキッチュなリフレインがとにかく決め手。この「♪トゥ、トゥ、トゥ」というコーラスに、ギター・リフがユニゾンで被さってくるリフレインを聴けば、思わず誰もが口ずさんでしまうに違いない。まさにペスト並みの感染力を持った、劇薬ポップ・ソングの代表格だ。セレブリティやアート界に蔓延するスノビズムに対する皮肉をテーマにした歌詞の辛辣なトーンも、いつになく攻撃的で、そのことがこの曲のポップネスをさらに際立てている。
-----
Do You Want To
-----
http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20051018107.html
-----
※原文ママでs
※アニメ「Paradise Kiss」のエンディングにも使われてたの思い出した、謎
以上。
ニュー・オーダー『HERE TO STAY』
ニュー・オーダー『HERE TO STAY』 New Order - HERE TO STAY
SNOOZER #030 - 2002年4月号 162ページ 文:田中宗一郎
かのハシエンダ---ファクトリーが経営していた、マンチェスターの伝説のクラブ(僕も一度だけ行ったことがある。その時は、フロアの中があまりに濃いスモークで視界が50センチもなかった)を舞台に、マンチェスター・シーンの栄枯盛衰を描いた映画『24HOUR PEOPLE』のサウンドトラックからの一曲。そう、これが聴きたかったのだ。当初はアルバム『ゲット・レディー』に収録予定だった、ケミカル・ブラザーズとのコラボレーション曲がこれだ。
何の変哲もないディスコ・ビート、だらしないほどメランコリックなメロディ---ニュー・オーダーは、この永遠のデカダンスから決して飛び出すことがあってはならないのではないか。タイトルまでも、あまりに出来過ぎ。永遠に繋がれた終わることのないデンデケデン。
-----
Here To Stay
-----
http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/2002041859.html
-----
※改行だけは云々
以上。
ブラッド・レッド・シューズ『ボックス・オブ・シークレッツ』
ブラッド・レッド・シューズ『ボックス・オブ・シークレッツ』 Blood Red Shoes - Box of Secrets
SNOOZER #066 - 2008年4月号 186ページ 文:田中宗一郎
この1stアルバムを聴くまでは、こんなにもポテンシャルのあるバンドだとは思わなかった。「シェラックとロイヤル・トラックスとエラスティカのちょうど真ん中辺りのかなり俺の好きな線だなー、グランジだけど踊れるし、女の子もビッチっぽいし」くらいに思っていた。
サウンド的には既出のミニ・アルバムに収録された曲と大きくは変わらないが、プロダクションが一気に厚みと重みを増した。だが、それよりも重要な変化がある。以前は、主にギター担当の女子ローラ・マリー・カーターが歌っていたのが、アルバムの先行シングル ❝アイ・ウィッシュ・アイ・ワズ・サムワン・ベター❞ 以来、太鼓担当の男子スティーヴ・アンセルが歌う比重がぐっと増え、モノクロームなサウンドにカラフルさを与えるのに一役買うようになったのがデカい。
二人が血みどろの夫婦喧嘩のように怒号をぶつけ合う、この新たなスタイルが、どこか「愛ゆえに傷付け合う恋人達」のメタファーめいて感じられることで、焦燥と怒りと退屈と混乱をモチーフにしたネガティヴなリリックに、切ないロマンティシズムを与えることになったのだ。業田良家の漫画『自虐の詩』みたいな。ははは。
それにしても、前述の ❝アイ・ウィッシュ・~❞ における、二十数秒にも及ぶスネアロールーーーこの狂おしい焦燥感とその直後の爆発。凄まじい。
-----
You Bring Me Down(Director's Version)
Say Something, Say Anything
I Wish I Was Someone Better
It's Getting Boring By The Sea
-----
http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20080418120.html
-----
※改行はもちろん適度に入れてまs
以上。
エディターズ『アン・エンド・ハズ・ア・スタート』
エディターズ『アン・エンド・ハズ・ア・スタート』 Editors - An End Has A Start
SNOOZER #062 - 2007年8月号 165ページ 文:田中宗一郎
もはや校了してしまったのでどうしようもないのだが、今号のP.216から始まるインディ・バンド星取り表に一つだけ訂正したい点がある。それはエディターズのところ。普通に良いと思っていたけど、違った。もうたまらなく良い。一連のポスト・パンク・リヴァイヴァリストの中で、エディターズだけが断トツに素晴らしい2ndアルバムを作った。1stアルバムが薄暗い闇に淡い光が差し込むような作品だったとすれば、本作は漆黒の闇に突然まばゆい光が降り注ぐような作品だ。R.E.M.の曲をエコー&ザ・バニーメンが演奏しているようなアルバム一曲目*1を聴くだけで、もはや至高の境地。凄まじい高揚感が味わえる。
薄暗い教会が似合う、初期キュアー譲りの深いエコーがかかったモノトーンのサイケデリック・ギターは、スピリチュアライズドにも似た、壮大なスケール感を感じさせる総天然色のギター・シンフォニーにグレードアップされた。イアン・カーティスにそっくりな、浪々と響き渡るトム・スミスのヴァリトン・ヴォイスは、時にナット・キング・コールばりに甘く、時にスコット・ウォーカーに並ぶほど情熱的。
これは、ハウス・オブ・ラヴの2ndアルバム*2とレディオヘッドの『ザ・ベンズ』との間にあるどこか。何ら信仰を持たない、罪深き我々のための21世紀のゴスペル・アルバムだ。素晴らしい。
-----
Smokers Outside The Hospital Doors
An End Has A Start
The Racing Rats
Push Your Head Towards The Air
残りのシングル ❝Bones❞ は公式がアップした動画か判別つかなかったので割愛しました。
-----
http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20070818116.html
-----
※改行はうんぬんかんぬn
以上。
THE ORDINARY BOYS『MAYBE SOMEDAY』
THE ORDINARY BOYS『MAYBE SOMEDAY』 ジ・オーディナリー・ボーイズ『メイビー・サムデイ』
SNOOZER #043 - 2004年4月号 164ページ 文:田中宗一郎
目の覚めるようなデビュー・シングルだ。
言ってしまえば、何の変哲もない2分21秒の王道ブリティッシュ・パンク。クラッシュの ❝ホワイト・ライオット❞ を思い出さずにはいられない、勢いまかせのパワー・コード。アメリカ人が聴いたら大笑いするに違いない、見事なクイーンズ・イングリッシュ。フリップ・サイドは、ストーン・ローゼズの1stアルバムを経由したバーズ風イントロから始まる。スミス? キンクス? いや、やっぱり思い出すのは、あのバンドだろう。
このところ、そのセックス・ピストルズっぷりにますます拍車がかけるリバティーンズを眺めながら、「あと、ジャムみたいなバンドも出てきたらな」なんて風に感じたことがあるなら、この1枚のシングルは、一瞬にして君を魅了するに違いない。
フロントマンのプレストンは、テレキャスター・カスタムを掻き鳴らし、幸運のピンクのシャツをスタイリッシュに着こなす、21歳。会社勤めを1年で放り出して、かつてビリー・ブラッグが労働党を支援したように緑の党を支援したいと語る、労働階級の熱血児だ。
プロデュースは、スティーヴン・ストリート。ブラーの2ndアルバム『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』とジャムの『オール・モッド・コンズ』が合わさったような、鮮烈なデビュー・アルバムを間違いなく作ってくれるだろう。激期待。
-----
まさかの公式動画なし・・(個人でアップしているのはありましt
-----
http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/2004041891.html
-----
※改行は適度に云々
以上。