スプーン『トランスファレンス』
スプーン『トランスファレンス』 Spoon - Transference
SNOOZER #077 - 2010年2月号*1*2 177ページ 文:田中宗一郎
※原文ママと言いたいところですが適度に改行を入れてます、あしからず
ロックのレコードでこんな斬新なプロダクションを聴いたのは、本当に久しぶり。ホワイト・ストライプスの ❝セヴン・ネーション~❞ やラプチャーの ❝ハウス・オブ・ジェラス~❞ 以来?
生楽器のラフなエッジを活かしたミニマルなプロダクションや、楽器を左右のチャンネルに極端に振り分ける手法、絶妙なダブ処理は、前作にあたる傑作『ガ・ガ・ガ・ガ・ガ』の時点ですでに芽生えていた。だが、生ドラムのビートをエディットし、不自然なループ感を強調したり、エコー処理したローファイな音色とクリアな音色を並列させ、音の位相の不気味な変化を生み出したりと、とにかく耳を飽きさせない。アコギの音、太鼓の音、エレキの音--すべてこの1年の間に聴いたレコードの中でも群を抜いて素晴らしい。
ソングライティング的には、前作に色濃かったビートルズ風味、60年代ソウルの要素は後退し、このバンドが80年代ポストパンクに触発され、カンの『エーゲ・バミヤージ』から名前を拝借したことを思い出させるミニマル・ロックンロール。ソングライティング的には10曲すべてが珠玉の名曲だった前作には及ばない。だが、アルバム全体のトータリティではこちらが上だろう。
これは21世紀の『リボルバー』、いや、ビートルズ『リボルバー』とコーネリアス『ポイント』のミッシング・リンクだ。
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Written In Reverse
Got Nuffin
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http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20091218131.html
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以上。