クリニック『ウォーキング・ウィズ・ジー』
クリニック『ウォーキング・ウィズ・ジー』 Clinic - Walking With Thee
SNOOZER #029 - 2002年2月号 147ページ 文:田中宗一郎
1stアルバムにおける、地下室で爆弾作ってる過激派みたいな正体不明の凄みはさすがに薄れたが、ダビーな音響はそのままに、リズムとサウンド・テクスチュアが整理され、見事に洗練された、充実の2ndアルバム。
完成度めっちゃ高い。
そう、これだけははっきりと言っておきたいのだけど、20年以上ずっとイギリス音楽を聴いていた人間として言わせてもらうなら、例の「UKギター・ロック」と呼ばれている音楽は、ザ・スミス以降の「インディ・ロック」という傍流でしかない。このクリニックみたいに、黒人には絶対に作れない黒人音楽、そして、アメリカ人には絶対に作れないアメリカ音楽をやっている人達こそが、僕にとってのブリティッシュ・ロックの王道だ。アイリッシュ音楽がアメリカに渡って、またそれが地球を一周して、港町リヴァプールに辿り着くーーー資源を持たない島国イギリスの植民地政策から零れ落ちた、カルチャーとアートの喜ばしき衝突。
ビートルズの世代は黒人リズム&ブルーズを、クラッシュの世代はカリブ音楽やヒップホップを、ストーン・ローゼズの世代はハウスやファンクを、それぞれ自分達のリアルに置き換えてみせた。そして、クリニックは、ニュー・オリンズのジャズやR&Bを自らのリアリティとして鳴らしている。
聴けば聴くほど心に染み込んでくる本当に素晴らしいアルバム。
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Walking With Thee
Come Into Our Room
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http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/2002021858.html
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※改行を適度に入れてます
以上。