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バトルス『ミラード』

バトルス『ミラード』 Battles - Mirrored

SNOOZER #061 - 2007年6月号 195ページ 文:田中宗一郎

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Battles - Mirrored

タイトル通り、写し鏡の向こう側で拡がり続ける、複雑ながら整然とした幾何学模様のような、変幻自在のリズムとリフの応酬によるトライバルで、ヒプノティックなダンス・ミュージック。これまで3枚のEPも十二分に刺激的だったものの、「メンバーそれぞれのキャリアからすれば、まぁ、当然こうなるわな」という納得の範疇を飛び出るものではなかった。だが、この初のフル・レングスでは、これまでの過剰な変拍子を抑え、ミニマルなビートを積極的に採用することで、ヒプノティックな感覚が強まった。ヘリウムガスを吸い込んだ時のように甲高くエフェクトされた声は、アルバム全体にメロディとユーモラスなムードを持ち込んだ。この差はデカい。

バトルスにしろ、トータスにしろ、マーズ・ヴォルタにしろ、ポストハードコア・バンドというのは、過剰なストイシズム息苦しさを感じさせる場合が多々ある。だが、このレコードでは、ユーモラスさとクールネスが絶妙に同居するようになり、気軽に楽しめる。幼児が幾何学パズルに夢中になっているような無邪気さと適度な覚醒感もある。ただ繰り返し聴いてると、ちょっとしたアンサンブルのズレ、エディットの甘さが気になりだすのが欠点。LCDサウンドシステム諸作やビョーク新作*1のような、生演奏の絶妙なエディットに比べると、そこが惜しい。

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Atlas

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Tonto

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SNOOZER #061

http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20070618115.html

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原文ママ

以上。

*1:おそらく『ヴォルタ』