アークティック・モンキーズ『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』
アークティック・モンキーズ『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』 Arctic Monkeys
SNOOZER #054 - 2006年2月号 201ページ 文:田中宗一郎
このアルバムが傑作なのは間違いない。総論についてはインタヴュー記事のリード文を読んでくれ。では何について書くべきか。それはどの曲が一番の名曲か、である。
だが、困った。どれも良すぎる。どの曲も、基本的な作りは、リフ主体の男臭いものなのにもかかわらず、あるポイントで、いきなりコードもメロディも甘くなることが憎い。しかも、レイ・ディヴィスからの伝統、3分間の短編映画というスタイルで描かれた物語がどれも憎い。でも、やっぱり一番は、通りで見かけた気になる女の子が、どこかの糞親父と援交してるんだか、売春させられているんだかを見て、でも、どうにも出来ない自分自身とその糞親父に激怒しまくる少年の心境を描いた ❝ホエン・ザ・サン・ゴーズ・ダウン❞ だろう。しかも、そこにスティングがポリス時代に書いた売春婦についての歌 ❝ロクサーヌ❞ の歌詞をさりげに引用しているのも憎い。「あいつら、『太陽が沈むと、この辺り、感じ変わるよね』とか言ってやがる」とマジ切れするリフレイン、最高。こういう青臭くて、シャイで、頑固な少年が主人公の、甘くて、苦い青春の物語が聴きたかった。
さあ、今すぐザ・フーの1stアルバム『マイ・ジェネレーション』なんて、捨てちまえ。君には、自分自身の世代の物語について語る権利がある。叫ぶ権利がある。
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I Bet You Look Good on the Dancefloor
When the Sun Goes Down
The View From The Afternoon
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http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20060218108.html
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※原文ママ
以上です。