ブラッド・レッド・シューズ『ボックス・オブ・シークレッツ』
ブラッド・レッド・シューズ『ボックス・オブ・シークレッツ』 Blood Red Shoes - Box of Secrets
SNOOZER #066 - 2008年4月号 186ページ 文:田中宗一郎
この1stアルバムを聴くまでは、こんなにもポテンシャルのあるバンドだとは思わなかった。「シェラックとロイヤル・トラックスとエラスティカのちょうど真ん中辺りのかなり俺の好きな線だなー、グランジだけど踊れるし、女の子もビッチっぽいし」くらいに思っていた。
サウンド的には既出のミニ・アルバムに収録された曲と大きくは変わらないが、プロダクションが一気に厚みと重みを増した。だが、それよりも重要な変化がある。以前は、主にギター担当の女子ローラ・マリー・カーターが歌っていたのが、アルバムの先行シングル ❝アイ・ウィッシュ・アイ・ワズ・サムワン・ベター❞ 以来、太鼓担当の男子スティーヴ・アンセルが歌う比重がぐっと増え、モノクロームなサウンドにカラフルさを与えるのに一役買うようになったのがデカい。
二人が血みどろの夫婦喧嘩のように怒号をぶつけ合う、この新たなスタイルが、どこか「愛ゆえに傷付け合う恋人達」のメタファーめいて感じられることで、焦燥と怒りと退屈と混乱をモチーフにしたネガティヴなリリックに、切ないロマンティシズムを与えることになったのだ。業田良家の漫画『自虐の詩』みたいな。ははは。
それにしても、前述の ❝アイ・ウィッシュ・~❞ における、二十数秒にも及ぶスネアロールーーーこの狂おしい焦燥感とその直後の爆発。凄まじい。
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You Bring Me Down(Director's Version)
Say Something, Say Anything
I Wish I Was Someone Better
It's Getting Boring By The Sea
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http://www.littlemore.co.jp/magazines/snoozer/issues/20080418120.html
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※改行はもちろん適度に入れてまs
以上。